上司や取引先から「ありがとうございます」と言われた時、「何と返事すればいいんだろう…」と迷った経験はありませんか。「どういたしまして」と答えるのが自然に感じるかもしれませんが、目上の方との関係では、より適切な表現があります。
目上の方からの感謝に対する返事では、相手への敬意を示しながら、謙虚な姿勢を表現することが大切です。この記事では、「謙譲の受け止め→感謝・貢献の表現→今後への意欲」の3つのステップを基本として、メール・口頭・チャットツールで使える具体的な返事の仕方をご紹介します。
・目上の方への返事で使うべき適切な敬語表現
・メール・口頭・チャットツール別のテンプレート
・褒められた時・依頼完了時など場面別の対応方法
・避けるべき表現とその理由
・敬語の正しい使い方の根拠と基準
目上の方への返事で大切な3つのポイント
目上の方からの「ありがとうございます」に対する返事では、以下の3つの要素を含めることで、適切で好印象な応答ができます。
- 謙譲の気持ちで受け止める
「恐れ入ります」「恐縮です」「身に余るお言葉です」など、相手の感謝を謙虚に受け止める表現から始めます。 - 感謝や貢献の気持ちを表現する
「お役に立てて何よりです」「光栄に存じます」「こちらこそありがとうございます」など、自分も感謝していることや、役に立てたことへの喜びを表現します。 - 今後への意欲を示す
「引き続き努めてまいります」「さらに精進いたします」「今後ともよろしくお願いいたします」など、継続的な関係性への意欲を示します。
適切な敬語表現と避けるべき表現
目上の方への返事では、使用する敬語表現によって印象が大きく変わります。適切な表現と避けるべき表現を理解しておきましょう。
分類 | 表現 | 適用場面 | 注意点 |
---|---|---|---|
推奨表現 | 恐れ入ります | 感謝を謙虚に受け止める | 最も汎用性が高く安全 |
推奨表現 | 恐縮です | 相手の厚意に対する謙遜 | 丁寧で上品な印象 |
推奨表現 | お役に立てて何よりです | 依頼や業務完了時 | 成果への喜びを表現 |
推奨表現 | こちらこそありがとうございます | 相互に協力した場合 | 相手の貢献も認める表現 |
注意が必要 | どういたしまして | 親しい関係 | 目上には少しカジュアル |
避けるべき | とんでもございません | – | 文法的に不適切とされる |
目上の方へのメールでの返事テンプレート
メールでの返事は記録として残るため、特に丁寧で適切な表現を心がけましょう。以下のテンプレートを参考にしてください。
業務完了への感謝に対する返事
件名:ご丁寧なお言葉をありがとうございます(○○の件) ○○部長 いつもお世話になっております。 この度はご丁寧なお言葉を賜り、恐れ入ります。 お役に立てて何よりでございます。 ○○様のご指導のおかげで、 良い成果を出すことができました。 引き続き○○の件につきまして、 ○月○日までに進捗をご報告いたします。 今後ともご指導のほど、 よろしくお願い申し上げます。 ○○
成果を褒められた時の返事
件名:身に余るお言葉、ありがとうございます ○○様 身に余るお言葉をいただき、恐縮です。 光栄に存じます。 チーム一丸となって取り組んだ結果であり、 皆様のご協力があってのことと感謝しております。 いただいたお言葉を励みに、 さらに精進してまいります。 今後ともよろしくお願いいたします。
相互協力への感謝に対する返事
○○様 こちらこそ、ご多忙の中お時間をいただき、 ありがとうございました。 ○○様のご助言により、 課題を解決することができました。 次回の会議(○月○日)に向けて、 議事録を整理してお送りいたします。 引き続きよろしくお願いいたします。
目上の方への口頭での返事パターン
口頭での返事は即座に反応する必要があるため、基本的なパターンを覚えておくと安心です。
基本的な返事
- 「恐れ入ります」 – 最もオーソドックスで安全な表現
- 「恐縮です」 – 丁寧で上品な印象を与える
- 「お役に立てて何よりです」 – 成果への喜びを表現
場面別の口頭返事例
業務完了を評価された時
「恐れ入ります。お役に立てて何よりでございます。 引き続き○○の件も頑張らせていただきます。」
指導への感謝を受けた時
「恐縮です。○○部長のご指導のおかげです。 今後ともよろしくお願いいたします。」
協力作業後の感謝を受けた時
「こちらこそありがとうございます。 ○○さんのお力添えがあってのことです。」
目上の方へのチャットツールでの返事テンプレート
Slack・Teamsなどのチャットツールでの返事は、簡潔さと丁寧さのバランスが重要です。長すぎず、短すぎない適度な長さを心がけましょう。
上司への返事(DM・メンション)
恐れ入ります。 お役に立てて何よりです。 引き続き○○を進めて、○日にご報告いたします。
チーム内での返事
恐縮です。 皆様のご協力があってのことです。 次のフェーズも頑張ります!
取引先を含むチャンネルでの返事
ご丁寧なお言葉をありがとうございます。 恐れ入ります。 引き続きよろしくお願いいたします。
避けるべき表現とその理由
目上の方への返事で避けるべき表現には、文法的な問題や敬語として不適切とされるものがあります。
「とんでもない」は一つの語であり、「ない」の部分だけを「ございません」に変えるのは文法的に不適切とされています。正しくは「とんでもないことでございます」「とんでもないことです」となります。ただし、近年は慣用的に使われることも多く、完全に間違いとは言い切れませんが、フォーマルな場面では避けるのが無難です。
なぜ「どういたしまして」は注意が必要なのか
「どういたしまして」は決して間違った表現ではありませんが、目上の方に対しては少しカジュアルな印象を与える場合があります。特に、非常に目上の方や取引先など、より丁寧な対応が求められる相手には、「恐れ入ります」「恐縮です」などの表現の方が適しています。
目上の方の感謝への返信の必要性について
目上の方からの感謝に対して、さらに返信が必要かどうかは状況によって判断が分かれます。以下の基準を参考にしてください。
状況 | 返信の必要性 | 理由 |
---|---|---|
社内の上司からの感謝 | 基本的に不要 | やり取りが長くなりすぎる |
取引先からの感謝 | 簡潔に返信 | ビジネス関係の維持 |
今後の予定がある場合 | 返信推奨 | 次のアクションを明確にする |
感謝と共に質問がある場合 | 必要 | 質問への回答が必要 |
よくある質問
「どういたしまして」は目上に使ってはいけませんか?
完全にNGではありませんが、注意が必要です。親しい上司や日常的な関係では問題ありませんが、非常に目上の方や取引先など、より丁寧な対応が求められる場面では「恐れ入ります」「恐縮です」などの表現の方が適しています。
「こちらこそ」は目上に使えますか?
適切に使えば問題ありません。「こちらこそありがとうございます」は、相手の貢献や協力を認める表現として、目上の方にも使用できます。ただし、相互に何らかの協力や恩恵があった場合に限られます。
メールの件名はどのように書けばよいですか?
内容が分かる具体的な件名にしましょう。「ご丁寧なお言葉をありがとうございます(○○の件)」「身に余るお言葉、恐縮です」など、感謝への返事であることと、何についてのものかが分かるように書きます。
口頭で返事する時の注意点は?
表情と声のトーンも大切です。言葉だけでなく、謙虚で感謝の気持ちが伝わる表情と声のトーンを心がけましょう。また、相手の話を最後まで聞いてから返事することも重要です。
チャットツールでの返事の長さはどの程度が適切ですか?
2〜3行程度が目安です。短すぎると冷たい印象を与え、長すぎると読むのが大変になります。「恐れ入ります」などの基本的な返事に、一言感謝や今後の方針を加える程度が適切です。
「とんでもございません」は絶対に使ってはいけませんか?
文法的には不適切とされていますが、現実的には広く使われている表現です。しかし、正式な場面や文書では「とんでもないことでございます」「恐れ入ります」などの表現を使う方が安全です。
目上の方への返事の基本チェックリスト
目上の方への返事を送る前に、以下の項目を確認しましょう。
□ 謙譲の気持ちを表現している
□ 感謝や貢献の気持ちを示している
□ 今後への意欲を表現している
□ 適切な敬語を使用している
□ カジュアルすぎる表現を避けている
□ 相手との関係性に適した丁寧度になっている
□ 必要に応じて次のアクションを明示している
□ 誤字脱字がない
まとめ
目上の方からの「ありがとうございます」に対する返事は、相手への敬意と自分の謙虚さを表現する大切な機会です。「恐れ入ります」「恐縮です」「お役に立てて何よりです」などの適切な表現を使い分けることで、良好な関係を維持できます。
大切なのは、謙譲の受け止め→感謝・貢献の表現→今後への意欲という流れを意識することです。機械的な定型文ではなく、相手の感謝に対する真摯な気持ちを込めた返事を心がけましょう。
また、メール・口頭・チャットツールといった異なる場面でも、基本的な考え方は同じです。相手との関係性と場面の公式度に応じて、適切な表現を選択することが重要です。
適切な返事ができることは、ビジネスパーソンとしての基本的なスキルの一つです。この記事のテンプレートを参考に、自分なりの自然で心のこもった返事を身につけていってください。相手を思いやる気持ちが伝われば、必ず良好な関係を築くことができるでしょう。