「今夜、飲み会はいかがですか?」そんな誘いを受けたとき、参加が難しい状況でも「人間関係を悪化させたくない」「今後誘ってもらえなくなるかもしれない」と悩むことはありませんか。
職場の飲み会を断ることは決して悪いことではありません。しかし、断り方次第で相手に不快な思いをさせてしまったり、今後の関係性に影響を及ぼしたりする可能性があるのも事実です。
この記事では、相手を不快にさせることなく、むしろ「配慮のできる人」として好印象を与える断り方を、実際の職場事例を交えながら詳しく解説します。基本的な3ステップから、相手別のテンプレート、しつこく誘われた場合の対処法まで、実際の場面で使える具体的な方法をご紹介します。
・人間関係を守る断り方の基本3原則
・上司・同僚・取引先など相手別の例文テンプレート
・状況に応じた使い分けができる理由10パターン
・押しが強い相手への段階的対処法
・職場のハラスメントに関する法的基礎知識
なぜ飲み会を断るのが難しいのか
多くの方が飲み会の断り方に悩む理由は、日本の職場文化と深く関わっています。厚生労働省の国民健康・栄養調査によれば、働く世代の多くが職場での人間関係にストレスを感じており、その背景には「断りにくい職場の雰囲気」があることが指摘されています。
また、株式会社識学の2024年調査では、職場の飲み会に「参加したくない」と回答した人が50.7%に上ることが明らかになっています。参加方法については「任意だが強制に近い」が36.3%と、参加せざるを得ない空気がある企業も多いことがわかります。
さらに、株式会社ネクストレベルの2024年調査では、年代を問わず6割以上の人が「飲みニケーションはいらない」と考えていることも示されています。理由として「気を遣う」「お金がかかる」などが上位を占めており、多くの人が飲み会参加に負担を感じていることがわかります。
重要なのは「断ること」ではなく「どう断るか」です。相手の気持ちを尊重しつつ、自分の状況も理解してもらう。そのバランスが、良好な職場関係を維持する鍵となります。
飲み会を角を立てずに断る3つの基本原則
効果的な断り方には、決まったパターンがあります。この3ステップを覚えることで、どんな相手にも自然で丁寧な対応ができるようになります。
- 感謝の気持ちを最初に伝える
「お声がけいただき、ありがとうございます」「お誘いをいただき光栄です」など、誘ってくれたことへの感謝から始めることで、相手に敬意を示し、良い印象を与えます。 - 簡潔で具体的な理由を一文で述べる
「先約があり」「家族の用事で」「体調を優先したく」など、詳細すぎない範囲で理由を伝えます。長々と説明すると言い訳っぽく聞こえてしまうため、一文で簡潔に。 - 代替案や今後の意欲を示す
「来週のランチでしたら」「別の機会に」「昼の短時間なら」など、完全に断るのではなく、別の形での参加意欲を示すことで、関係継続への意思を伝えます。
基本テンプレート(どんな場面でも使える万能版)
お声がけいただき、ありがとうございます。 申し訳ございませんが、【理由を一文で】のため、 今回は参加が難しい状況です。 【代替案】でしたら、ぜひお時間をいただけると嬉しいです。
飲み会を断る理由10選
断る理由は、相手との関係性や職場の雰囲気に合わせて選ぶことが大切です。以下の表を参考に、最適な理由を見つけてください。なお、これらの理由は嘘をつくためのものではなく、実際の状況に応じて使い分けるためのガイドラインです。
理由 | 使用場面 | 丁寧度 | 具体例 |
---|---|---|---|
先約・所用 | 全般・万能 | 丁寧 | 先約があり、今回は失礼いたします |
家族の予定 | 同僚・友人 | 普通 | 家族の用事があり、参加できません |
体調管理・通院 | 全般 | 丁寧 | 体調を優先したく、今回は見送ります |
早朝出張・業務 | ビジネス | 丁寧 | 明朝出張のため、失礼いたします |
業務都合・締切 | ビジネス | 普通 | 急ぎの案件があり、参加できません |
金銭面の配慮 | 同僚・友人 | カジュアル | 今月は交際費を抑えており、見送ります |
飲酒を控え中 | 全般 | 丁寧 | 現在飲酒を控えており、失礼いたします |
大人数が苦手 | 親しい関係 | カジュアル | 大人数が苦手で、少人数なら参加します |
距離・終電 | 全般 | 普通 | 終電の関係で、今回は失礼します |
理由は控える | プライバシー重視 | 丁寧 | 都合により、今回は辞退いたします |
当日急に誘われた場合の対処法
「今から飲みに行こう」といった急な誘いは、特に断りにくい状況です。こうした場合の対応方法をご紹介します。
・体調を理由にする(朝から頭痛、お腹の調子が悪い等)
・家族との約束を理由にする(夕食の準備、子供の迎え等)
・翌日の予定を理由にする(早朝会議、重要な業務等)
・「今日はゆっくり休みたい」と素直に伝える
当日誘いへの対応テンプレート
お疲れ様です。お声がけいただき、ありがとうございます。 申し訳ないのですが、朝から体調が優れず、 今日は早めに休ませていただきたいと思います。 また別の機会に、ぜひお願いします。
相手別・状況別飲み会の断り方テンプレート集
ここからは、実際の職場でよくある場面別に、そのまま使えるテンプレートをご紹介します。これらは労務管理の現場でも推奨されている表現です。
上司・先輩への断り方
上司や先輩への断り方は、特に丁寧さが求められます。しかし、過度にへりくだる必要はありません。誠実さと敬意を示すことが大切です。
事前に丁寧に断る場合(口頭・対面)
いつもお声がけいただき、ありがとうございます。 恐れ入りますが、先約があり今回は失礼いたします。 よろしければ来週の平日12時頃、 ランチをご一緒させていただけませんでしょうか。 引き続きよろしくお願いいたします。
当日の急なキャンセル(費用配慮込み)
お忙しい中、直前のご連絡で恐縮です。 急用により本日の参加が困難になりました。 会費やキャンセル料は私が負担いたしますので、 後ほどお知らせいただけますでしょうか。 改めて別の機会にお時間をいただければ幸いです。
取引先・お客様への断り方(メール)
取引先への断り方は、ビジネス関係に影響しないよう特に慎重に行う必要があります。
件名:【会食辞退のお願い】○月○日の件について
○○株式会社 ○○様 いつも大変お世話になっております。 △△会社の△△でございます。 この度はお招きいただき、誠にありがとうございます。 大変恐縮ですが、出張の予定と重なり、 当日は辞退させていただけますと幸いです。 つきましては、○月○日12:00からのランチ、 または30分程度のオンライン面談にて 代替させていただけませんでしょうか。 ご都合のよろしい方をご教示いただければ調整いたします。 ご迷惑をおかけして申し訳ございません。 今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
同僚への断り方
同僚との関係では、適度な親しみやすさを保ちながらも敬意を示すことが大切です。
Slack・Teams(やわらか・親しみやすい)
声かけありがとう! 今夜は先約があって難しそうです。 代わりに明日12:10からの社食はどう? よろしくお願いします!
部署の懇親会(社内メール)
件名:【欠席のご連絡】○月○日懇親会について
○○部 各位 / 幹事の○○様 いつもありがとうございます。○○です。 恐縮ですが、家族の用事のため 今回は不参加とさせてください。 当日費用が発生する場合は負担いたします。 後日、○月○日の昼に改めて皆さんと お話しできれば嬉しいです。 何卒よろしくお願いいたします。
友人・プライベートでの断り方
LINE・カジュアルな関係
誘ってくれてありがとう! 家族の予定があって今回はパスさせてもらうね。 代わりに来週の平日ランチはどう? また予定合わせよう!
押しが強い相手への段階的な飲み会の断り方
時には、一度断っても「少しだけでも」「一杯だけなら」としつこく誘ってくる方もいらっしゃいます。そんな場合には、段階的にはっきりと境界線を示すことが大切です。
- 方針として明確に伝える
個人的な事情ではなく「方針」として伝えることで、議論の余地を減らします。「現在、夜の会合は控える方針にしております」 - 代替案を積極的に提示
断るだけでなく、積極的な代替案を示すことで、関係継続への意欲を表現します。「ランチやノンアルコールの場でしたら前向きに検討します」 - 一貫した態度を保つ
一度でも妥協すると「少しなら大丈夫」と思われてしまうため、一貫した対応を心がけます。 - 必要に応じて第三者に相談
それでも続く場合は、人事部門や上司など第三者への相談を検討します。
境界線を明確に示すスクリプト
お誘い自体は大変嬉しく思います。 ただ、夜の会合は当面控える方針でして、 昼間の短時間でしたら前向きに調整いたします。 この方針は健康面を考慮して決めたことですので、 次回も同様にお願いいたします。 ご理解いただけますと幸いです。
職場の飲み会とハラスメントについて
職場での飲み会参加の強制や、断ったことを理由とした不利益な扱いは、法的にも問題となる可能性があります。自分の権利について正しく理解しておくことは重要です。
厚生労働省では、令和4年4月からパワーハラスメント防止措置が全ての事業主に義務化されています。パワハラの類型の一つに「個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)」があり、飲み会への参加強制や断る理由の詮索も該当する可能性があります。
また、厚生労働省ポータルサイト「あかるい職場応援団」では、具体的なハラスメント事例や対処法について詳しく解説されています。困った場合は、人事部門や総合労働相談コーナーへの相談をおすすめします。
重要なのは、「断る権利」があることを理解し、無理な参加を強いられた場合には適切な相談先があることを知っておくことです。
ハラスメントに該当する可能性のある行為
行為 | 具体例 | 対処法 |
---|---|---|
参加強制 | 「断るなら査定に響く」等の発言 | 記録を残し、人事部門に相談 |
理由の詮索 | プライベートな事情を根掘り葉掘り聞く | 「プライベートなことなので」と境界線を引く |
不利益な扱い | 断った後の冷遇や嫌がらせ | 証拠を集め、労働相談コーナーに相談 |
繰り返しの誘い | 断っているのに毎回しつこく誘う | 文書で方針を伝え、上司に相談 |
よくある失敗例と改善方法
これまで多くの職場で見られる失敗パターンとその改善方法をまとめました。
NG例 | なぜ失敗するのか | 改善方法 |
---|---|---|
「忙しいので無理です」 | 感謝やお詫びがなく、冷たく聞こえる | 「ありがとうございます。恐縮ですが、繁忙期が重なり…」 |
病気の詳細を長々と説明 | 情報過多で相手が困る | 「体調を優先したく」程度に留める |
「飲み会なんて時代遅れ」 | 活動自体を否定して相手を不快にする | 個人的事情に焦点を当て、価値観の押し付けは避ける |
返信を何日も先延ばし | 幹事が人数把握できず迷惑をかける | 短文でも24時間以内に返事をする |
毎回同じ理由(体調不良など) | 嘘だとバレて信頼を失う | 「夜は控える方針」と正直に伝える |
連絡なしのドタキャン | 信用を大きく失う最悪のパターン | どんな事情でも必ず事前連絡をする |
連絡手段別の効果的な飲み会の断り方
同じ内容でも、連絡手段によって印象が大きく変わります。それぞれの特徴を活かした伝え方をマスターしましょう。
口頭・対面での断り方
表情と声のトーンが重要です。笑顔を保ちながら、感謝→理由→代替案の順で簡潔に。相手の反応を見ながら調整できるのが口頭の利点です。話し終わった後、相手が何か言いたそうな場合は、少し間を置いて話を聞く姿勢を見せましょう。
電話での断り方
「今お時間よろしいでしょうか?」から始め、要点を整理して短時間で。電話は相手の時間を拘束するため、簡潔さが特に重要です。また、声だけでのコミュニケーションなので、普段よりも丁寧な口調を心がけましょう。
メールでの断り方
件名を分かりやすくし、【辞退のお願い】【日程再提案】などを明記。文書として残るため、より丁寧な表現を心がけます。メールの場合は感情が伝わりにくいため、感謝の気持ちをより明確に表現することが大切です。
LINE・Slackでの断り方
スタンプだけで終わらせず、一言と代替案を添えて。カジュアルな中にも配慮を示すことで、良い関係を維持できます。ただし、あまりにカジュアルすぎると軽く見られる可能性があるため、相手との関係性を考慮して言葉遣いを調整しましょう。
よくある質問
何度も断っていると「付き合いの悪い人」と思われませんか?
毎回丁寧に断り、代替案を提示していれば、むしろ「配慮のできる人」として評価されることが多いです。「当面、夜の会は控える方針です」と方針として伝え、昼の食事会やノンアルコールの場への参加意欲を示すことで、前向きな関係を維持できます。重要なのは一貫性と、代替案を実際に実行することです。
直前キャンセルの場合、費用負担はどう伝えればよいですか?
「キャンセル費用は私が負担いたします」と明確に伝えることが大切です。具体的には、「申し訳ございません。会費やキャンセル料が発生しましたら、後ほど教えてください」と責任を持つ姿勢を示しましょう。この一言で、相手に迷惑をかけたことへの責任感と誠意を伝えることができます。
理由を詳しく聞かれた場合はどう対応すべきですか?
「都合により」「所用で」程度に留め、それ以上の詳細な説明は避けましょう。もし更に詮索された場合は、「プライベートなことで、詳細は控えさせてください」と丁寧に境界線を引くことが大切です。プライベートな理由を根掘り葉掘り聞くこと自体がハラスメントに該当する可能性もあります。
一次会だけ参加して途中退席することは可能ですか?
もちろん可能です。事前に「一次会までの参加とさせてください」と伝えておけば問題ありません。理由としては「終電の関係で」「家庭の事情で」などが自然です。途中退席する際は、幹事の方に一言お礼を伝えてから失礼するのがマナーです。
上司から「チームワークが大切」と言われて参加を求められた場合は?
「おっしゃる通りです。チームワークは大切に考えております。ただ、現在の状況では夜の参加が困難ですので、昼の短時間でしたら積極的に参加いたします」と、チームワークの重要性に同意しつつ、代替案を提示しましょう。会社の業務時間外の活動への参加強制は、パワハラに該当する可能性もあります。
健康上の理由で飲酒できない場合、どう説明すればよいですか?
「体質的にお酒が飲めないため、ノンアルコールでお付き合いします」と伝えれば十分です。詳細な病状や薬の種類などを説明する必要はありません。「医師から控えるよう言われており」という表現も効果的で、相手も理解しやすいでしょう。大切なのは、参加への意欲を示しつつ、自分の状況を理解してもらうことです。
飲み会を断ったことで仕事に影響が出ることはありますか?
法律上、業務時間外の飲み会参加は任意であり、断ったことを理由に仕事上の不利益を与えることは認められていません。もし断ったことで明らかに冷遇されるなど不利益な扱いを受けた場合は、ハラスメントに該当する可能性があります。記録を残し、人事部門や労働相談コーナーに相談することをお勧めします。
「みんな参加するのに」と言われた場合の対応は?
「皆さんが参加されるのは素晴らしいことですね。私も本当は参加したいのですが、今回はどうしても都合がつかず申し訳ありません。次回は調整できるよう努力いたします」と、他の人の参加を肯定しつつ、自分の事情を説明しましょう。集団圧力を使った参加強要もハラスメントに該当する可能性があります。
飲み会を断る時の確認チェックリスト
断り方が適切かどうか、以下のポイントで確認してみてください。
・感謝の気持ちを最初に伝えている
・理由は簡潔で一文程度
・代替案や前向きな姿勢を示している
・相手に応じた適切な丁寧度
・24時間以内に返事をしている
・(当日の場合)費用負担への言及
・詳細すぎる説明は避けている
・一貫した態度を保っている
・相手の立場や気持ちに配慮している
・自分の境界線を明確にしている
・嘘をついていない(実情に基づいている)
・代替案が実行可能な範囲内である
まとめ:良好な関係を保ちながら自分らしく働く
飲み会の上手な断り方は、単なるテクニックではありません。相手を尊重し、自分の状況も理解してもらう。この絶妙なバランスが、長期的な職場の人間関係を良好に保つ鍵となります。
多くの働く人々が同じような悩みを抱えており、適切な断り方を身につけることで、職場でのストレスを軽減し、むしろ「配慮のできる人」として信頼されるようになることは十分可能です。大切なのは、感謝→理由→代替案の3ステップを自然に使えるようになることです。
最初は慣れないかもしれませんが、この記事のテンプレートを参考に実践していけば、必ず自信を持って断れるようになります。そして、無理をして参加するよりも、正直に状況を説明し、可能な範囲で協力する方が、結果的により良い職場関係を築けることを実感していただけるでしょう。
何より重要なのは、自分の価値観やライフスタイルを大切にしながら、職場でも良好な関係を維持することです。適切な断り方をマスターすることで、仕事もプライベートも充実した毎日を送ることができるはずです。
職場のコミュニケーションは、お互いの違いを理解し合うためのものです。飲み会への参加・不参加も、その人のライフスタイルや価値観の一部として尊重されるべきです。この記事が、あなたらしく働きながら良好な人間関係を築くお手伝いになれば幸いです。