相手は貴重な時間と労力を割いて見積もりを作成しています。敬意と透明性を保った文面により、将来のビジネスチャンスを残しながら適切な断り方を実現しましょう。
見積りへのお断りメールの基本原則(5つのポイント)
効果的な見積もりのお断りメールには、以下の5つの原則があります。これらを守ることで、相手に失礼のない丁重な断り方ができます。
- 件名で結論を明示する
「【見積の御礼とご辞退のご連絡】」「【見積の件・見送りのご連絡】」のように、開封前に内容がわかる件名にします。相手の時間を無駄にしないための配慮です。 - 24時間以内の迅速な返信
見積もりを受け取ったら、遅くとも翌営業日までに返信します。判断に時間がかかる場合でも、受領確認と検討中である旨を先に連絡しましょう。 - 具体的な固有名詞で識別性を高める
製品名・案件名・日付を件名に含めることで、受信箱での識別が容易になります。複数案件を並行している場合は特に重要です。 - 理由は簡潔に、角を立てずに
「予算都合」「スケジュール不一致」「要件不一致」など、一語から一文程度で十分です。詳細すぎる理由は逆に相手を困惑させる場合があります。 - 将来の可能性を残す表現
「条件が整いましたら」「要件が変更になりましたら」など、将来の関係継続に含みを持たせることで、長期的なビジネス関係を維持できます。
【状況別】見積もりへのお断りメール件名テンプレート30選
実務でそのまま使える件名テンプレートを、状況別に30パターンご紹介します。【 】内を実際の情報に置き換えてください。
基本パターン(丁寧・明確型)
No. | 件名テンプレート | 適用場面 |
---|---|---|
1 | 【見積の御礼とご辞退のご連絡】(【案件名】・【社名】【氏名】) | 最も汎用性の高い基本形 |
2 | 見積ご提示の御礼・今回は見送りのご報告(【製品名】) | 製品・サービス名を明記したい場合 |
3 | 【御礼】お見積の件につきまして(見送りのご連絡) | 簡潔に結論を伝える場合 |
4 | お見積書の御礼と結果のご共有(今回は見送り) | 検討結果を報告する形 |
5 | 見積の御礼・選定結果のご報告(【社名】【氏名】) | 選定プロセスがあった場合 |
理由明示パターン(短く明確型)
No. | 件名テンプレート | 適用場面 |
---|---|---|
6 | 【御礼】見積の件・予算都合により見送り(【案件名】) | 予算が主な理由の場合 |
7 | 見積の御礼・スケジュール不一致のため辞退 | 納期・タイミングが合わない場合 |
8 | お見積の御礼・要件不一致により見送らせてください | 仕様・機能面で合わない場合 |
9 | 【御礼】相見積の結果ご連絡(今回は他社採用) | 比較検討の結果の場合 |
10 | 見積御礼・社内方針により見送り(【四半期】) | 社内事情による見送りの場合 |
関係維持パターン(将来性重視型)
No. | 件名テンプレート | 適用場面 |
---|---|---|
11 | 見積の御礼・次機会のご相談(条件整い次第) | 将来の検討可能性がある場合 |
12 | 【御礼】見積拝受・要件再定義後に再相談させてください | 要件見直し予定がある場合 |
13 | 見積の御礼・将来検討に向け一次見送り | 時期をずらして検討予定の場合 |
14 | 【御礼】今回見送り・資料は社内回覧します | 情報価値を認めている場合 |
15 | 見積御礼・条件変動時の再見積のお願い(任意) | 条件次第で検討する場合 |
早期・即時断りパターン
No. | 件名テンプレート | 適用場面 |
---|---|---|
16 | 【御礼】見積受領のご連絡(即時見送り) | 明らかに条件が合わない場合 |
17 | 見積の件・大変恐縮ですが今回は辞退いたします | 丁重に即座に断る場合 |
18 | 【御礼】見積のご対応に感謝・見送りのご連絡 | 感謝を強調したい場合 |
19 | 見積御礼・要件変更のため白紙化のお願い | 企画自体が変更になった場合 |
20 | 【御礼】見積受領・社内判断により見送り | 社内決定事項の場合 |
再断り対応パターン(継続営業への対応)
No. | 件名テンプレート | 適用場面 |
---|---|---|
21 | 【再送】見積の御礼と辞退のご連絡(前回の続き) | 再度提案があった場合 |
22 | 見積の件・繰り返しのご案内につきまして(辞退) | 継続的な営業に対して |
23 | 【最終】見積の御礼・本件ご辞退のお願い | 最終的な断りの場合 |
24 | 見積御礼・本件は見送り(以後ご提案不要) | 明確に提案停止を求める場合 |
25 | 見積の御礼・体制上お受けできません(再度のご連絡) | 体制的に対応不可の場合 |
敬意重視パターン(ベンダー配慮型)
No. | 件名テンプレート | 適用場面 |
---|---|---|
26 | 【御礼】迅速な見積ご提示に感謝・見送りのご連絡 | 迅速対応への感謝を示す場合 |
27 | 見積の御礼・貴重なご提案に感謝(今回は見送り) | 提案内容を評価している場合 |
28 | 【御礼】丁寧なご説明に感謝・選定結果のご報告 | 説明機会があった場合 |
29 | 見積御礼・将来の検討機会について | 将来性を重視する場合 |
30 | 【御礼】ご提案の厚意に感謝・見送りの旨 | 提案への敬意を示す場合 |
「御礼+結論(見送り・辞退)+固有名(製品・案件)+差出人」の要素を組み合わせることで、受信箱で一目で内容がわかる効果的な件名になります。
【状況別】見積もりへのお断りメール本文テンプレート8選
実際のメール本文で使える、状況別のテンプレートをご紹介します。コピーして【 】内を置き換えるだけで使用できます。
1. 予算都合による見送り(基本形)
【相手会社名】 【部署名】 【氏名】 様 いつもお世話になっております。 【自社名】の【自分の名前】です。 このたびは迅速にお見積をご提示くださり、 誠にありがとうございました。 社内で慎重に検討しました結果、予算の都合により、 今回は見送らせていただく判断となりました。 ご対応にお時間を割いていただいたにもかかわらず、 誠に申し訳ございません。 条件が整いました折には、あらためてご相談させてください。 引き続き何卒よろしくお願いいたします。 ―――――――――――――――――――― 【自社名・部署・氏名】 【連絡先】 ――――――――――――――――――――
2. スケジュール不一致による見送り
【相手会社名】 【部署名】 【氏名】 様 いつもお世話になっております。 【自社名】の【自分の名前】です。 お見積書をご提示いただき、ありがとうございました。 検討しました結果、納期の見通しが当方の計画と 折り合わず、誠に恐縮ですが今回は辞退いたします。 今後スケジュールの条件が合う機会がございましたら、 ぜひご相談させてください。 引き続き何卒よろしくお願いいたします。 ―――――――――――――――――――― 【署名】 ――――――――――――――――――――
3. 要件不一致(機能・仕様上の理由)
【相手会社名】 【部署名】 【氏名】 様 いつもお世話になっております。 【自社名】の【自分の名前】です。 詳細なお見積をいただき、ありがとうございました。 ご提案の構成を拝見し、当方の要件との齟齬が 解消できない見込みのため、見送りの判断といたしました。 丁寧なご説明に深く感謝申し上げます。 将来の要件見直し時には、改めてご連絡いたします。 引き続き何卒よろしくお願いいたします。 ―――――――――――――――――――― 【署名】 ――――――――――――――――――――
4. 相見積の結果、他社採用
【相手会社名】 【部署名】 【氏名】 様 いつもお世話になっております。 【自社名】の【自分の名前】です。 お見積をいただき、誠にありがとうございました。 相見積での比較検討の結果、今回は他社様の条件で 進めることになりました。 ご提案・ご配慮に心より感謝申し上げます。 次の機会がございましたら、ぜひお声がけさせてください。 引き続き何卒よろしくお願いいたします。 ―――――――――――――――――――― 【署名】 ――――――――――――――――――――
5. 早期・即時の辞退(要件変更・社内方針)
【相手会社名】 【部署名】 【氏名】 様 いつもお世話になっております。 【自社名】の【自分の名前】です。 お見積をご提示いただき、ありがとうございました。 社内方針の変更により案件自体を見直す運びとなり、 今回は白紙化させてください。 急なご連絡となり恐縮ですが、何卒ご理解賜れますと幸いです。 引き続き何卒よろしくお願いいたします。 ―――――――――――――――――――― 【署名】 ――――――――――――――――――――
6. 継続営業への丁重な再断り
【相手会社名】 【部署名】 【氏名】 様 いつもお世話になっております。 【自社名】の【自分の名前】です。 たびたびのご提案に御礼申し上げます。 恐縮ですが、本件は体制上対応が難しく、 当面の間は追加のご提案を差し控えていただけますと幸いです。 条件が変わりましたら、こちらからご連絡いたします。 引き続き何卒よろしくお願いいたします。 ―――――――――――――――――――― 【署名】 ――――――――――――――――――――
7. 担当交代・窓口終了に伴う辞退
【相手会社名】 【部署名】 【氏名】 様 いつもお世話になっております。 【自社名】の【自分の名前】です。 お見積をいただき、ありがとうございました。 担当交代により、本件の検討を終了する運びとなりました。 誠に申し訳ございませんが、今回は辞退いたします。 これまでのご対応に深く感謝申し上げます。 引き続き何卒よろしくお願いいたします。 ―――――――――――――――――――― 【署名】 ――――――――――――――――――――
8. 返信遅延+辞退(お詫び強化型)
【相手会社名】 【部署名】 【氏名】 様 いつもお世話になっております。 【自社名】の【自分の名前】です。 お見積をいただいておりましたが、ご連絡が遅くなり 申し訳ございません。 社内調整の結果、今回は見送らせていただきます。 ご多忙のところご対応いただいたにもかかわらず、 誠に失礼いたしました。 引き続き何卒よろしくお願いいたします。 ―――――――――――――――――――― 【署名】 ――――――――――――――――――――
見積もりへの断りメールの言い換え例
よくある断りメールの問題点と、改善された文面をご紹介します。適切な表現により、相手との関係を損なうことなく断ることができます。
表現の改善例
NG例 | OK例 | 改善ポイント |
---|---|---|
今回は見送りです。 | 予算の都合により、今回は見送らせていただく判断となりました。ご対応にお時間を割いていただいたにもかかわらず、誠に申し訳ございません。 | 理由明記+お詫び追加 |
安くないので無理です。 | コスト要件と折り合わず、誠に恐縮ですが今回は辞退いたします。 | 否定的表現を緩和 |
機能が足りません。 | 当方の要件との齟齬が解消できない見込みのため、見送りの判断といたしました。 | 直接的批判を避ける |
敬語の改善例
NG例 | OK例 | 改善ポイント |
---|---|---|
拝見させていただきました | 拝見いたしました | 二重敬語の修正 |
お断りさせていただきます | 見送らせていただきます | より柔らかい表現に変更 |
ご提案をいただいて恐縮です | ご提案いただき、ありがとうございます | 感謝を前面に出す |
構成の改善例
NG例 | OK例 | 改善ポイント |
---|---|---|
いきなり断りから始まる | 感謝→結論→理由→お詫び→将来の余地 | 構成を整理 |
理由が詳細すぎる | 一語〜一文程度の簡潔な理由 | 適切な詳細度に調整 |
将来の可能性に触れない | 条件が整いましたら、あらためてご相談させてください | 関係継続の余地を残す |
見積もりへのお断りメールの実務運用ルール
見積もり断りメールを適切に送信するための、実務で使える3つのステップをご紹介します。
- 迅速な対応(24時間ルール)
見積もりを受領したら、当日から翌営業日までに返信します。判断に時間がかかる場合でも、受領確認と検討中である旨を先に連絡し、決定時期の目安を伝えます。 - 社内記録の整備
断りの理由(予算・時期・要件)を社内で一行記録し、将来の再検討トリガーとして活用します。条件が変わった際の再相談に役立ちます。 - 情報管理の適切な実施
見積もり書の添付ファイル・リンク・パスワードは社内規定に従い適切に保管または削除します。必要に応じて破棄・返却の旨を相手に明記することも重要です。
・予算不足 → 将来の予算確保時期を示唆
・スケジュール不一致 → 次期プロジェクトでの可能性に言及
・要件不一致 → 要件見直し時の再相談を提案
よくある質問
Q1. 断りの理由はどの程度詳しく書くべきですか?
A. 一語から一文程度で十分です。「予算都合」「スケジュール不一致」「要件不一致」など、角を立てない抽象度で記載します。詳細すぎる理由は相手を困惑させる場合があります。
Q2. 相見積で他社を採用した場合、どこまで触れるべきですか?
A. 「他社採用」+感謝+将来の余地まで。価格差や具体的な比較内容は記載せず、感謝の気持ちと将来の機会への言及に留めるのが適切です。
Q3. しつこい営業にはどう対応すれば良いですか?
A. 窓口終了または提案停止期間を明示します。「当面の間は追加のご提案を差し控えてください」「条件が変わりましたら、こちらからご連絡します」など、明確な境界を設定します。
Q4. 件名にはどこまで具体的な情報を入れるべきですか?
A. 「御礼+見送り・辞退+案件名・製品名+差出人」が基本です。受信箱で一目で内容がわかり、本文を開く前に結論が伝わるようにします。
Q5. 返信が遅れてしまった場合はどうすれば?
A. 冒頭で遅延のお詫び→結論→理由の順で構成します。「ご連絡が遅くなり申し訳ございません」から始め、通常より丁寧なお詫びの表現を使用します。
Q6. 英語での見積もり断りメールのポイントは?
A. 件名は「Thank you — decision update (regarding your quote)」で開始します。本文は「Thanks → Decision → Reason (brief) → Apology → Future opportunity」の順で、日本語より簡潔に構成します。
送信前チェックリスト(90秒確認)
□ 件名に「御礼+結論(見送り・辞退)+固有名(製品・案件)+差出人」を含める
□ 本文は「感謝→結論→理由→お詫び→将来」の順で構成
□ 理由は一語〜一文で角を立てない表現
□ 二重敬語・過剰敬語なし(「拝見いたしました」「存じます」など適切な敬語使用)
□ 送信タイミングは当日〜翌営業日の24時間以内
□ 添付・リンクの取扱い方針は社内で合意済み(必要なら破棄・返却を明記)
まとめ
見積もりへのお断りメールは、将来のビジネス関係を左右する重要なコミュニケーションです。24時間以内の迅速な返信、感謝を込めた丁寧な文面、将来の可能性を残す表現を心がけることで、相手との良好な関係を維持できます。
今回ご紹介した30の件名テンプレートと8種類の本文例を状況に応じて使い分け、NG→OK改善例を参考に文面品質を向上させてください。適切な断り方により、長期的なビジネスパートナーシップの構築が可能になります。
次回見積もりを受け取った際は、今回のテンプレートを活用して迅速かつ丁寧な返信を心がけてください。相手の反応や関係性の変化を観察することで、自社に最適な断り方のパターンを確立できます。