ビジネスメールで「教えてください」と伝えたい時、「ご教示」と「ご教授」のどちらを使うべきか迷った経験はありませんか?
実際の法令や公的資料を調べてみると、この2つには明確な使い分けの基準があります。間違って使うと相手に違和感を与えたり、場合によっては失礼にあたったりすることも。
この記事では、文化庁の敬語指針や関係法令をもとに、正しい使い分け方法を具体的なメール例文と共に解説します。
ご教示:手順・方法・連絡先など「具体的な情報」を教えてもらう時
ご教授:技術・知識など「専門的な指導」をお願いする時
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「ご教示」と「ご教授」の基本的な違い
ご教示:具体的な情報・手順を教わる時
「教示」は行政法の分野でよく使われる用語で、具体的な方法や手順、情報を示すことを意味します。
行政不服審査法第82条では、不服申立ての「方法・期間・提出先を教示する」と規定されています。つまり「教示」とは、やり方や手続きを具体的に示すことなのです。
ご教示を使うべき場面:
– 申請書の提出方法や期限を聞く
– 会議の場所や時間を確認する
– 連絡先や窓口を尋ねる
– 手続きの流れを教わる
ご教授:専門的な知識・技術を学ぶ時
「教授」は学校教育法第83条で大学の目的として「学芸を教授研究する」と定められているように、専門的・継続的な教育や指導を意味します。
文部科学省の資料でも、教授は「学生を教授し、その研究を指導する」職務と説明されています。つまり体系的な学問や技術の指導に使われる言葉です。
ご教授を使うべき場面:
– 専門技術の指導をお願いする
– 研究手法について学ぶ
– 業務スキルの訓練を依頼する
– 長期的な指導をお願いする
実務で使える判断基準
迷った時は、以下の基準で判断してください:
判断ポイント | ご教示 | ご教授 |
---|---|---|
内容 | 情報・手順・方法 | 知識・技術・スキル |
期間 | 一回で完結 | 継続的な指導 |
関係性 | 情報提供者に依頼 | 専門家・指導者に依頼 |
具体例 | 「締切日をご教示ください」 | 「営業手法をご教授ください」 |
ビジネスメールで使える例文集
「ご教示」を使った例文
件名:申請書類の提出方法について ○○部 △△様 いつもお世話になっております。 株式会社××の□□です。 来月の会議で使用する資料の提出について、 以下の点をご教示いただけますでしょうか。 ・提出期限 ・提出形式(PDF or 紙媒体) ・提出先のメールアドレス お忙しい中恐れ入りますが、 よろしくお願いいたします。 □□
件名:当日の受付手順について ○○様 お疲れさまです。 来週の研修参加についてご連絡いたします。 当日の受付手順と集合場所について ご教示いただけますと幸いです。 また、持参すべき資料がございましたら 併せてお知らせください。 よろしくお願いいたします。
「ご教授」を使った例文
件名:プレゼンテーション技術のご指導について ○○部長 いつもお世話になっております。 営業部の□□です。 この度、お客様向けプレゼンテーションの スキル向上を図りたく、ご相談いたします。 お時間をいただき、効果的な プレゼンテーション手法について ご教授いただくことは可能でしょうか。 1時間程度のお時間をいただければと 考えております。 ご多忙の中恐縮ですが、 ご検討いただけますと幸いです。 □□
件名:マーケティング分析手法について ○○先生 いつもお世話になっております。 弊社の事業戦略策定にあたり、 市場分析の手法についてご教授を お願いできればと考えております。 データ分析の具体的なアプローチや 競合分析の進め方について、 ご指導いただけますでしょうか。 お忙しい中恐れ入りますが、 ご検討のほどよろしくお願いいたします。
よくある間違いと正しい表現
よくある間違い | 正しい表現 | 理由 |
---|---|---|
「提出方法をご教授ください」 | 「提出方法をご教示ください」 | 手順の説明なので「教示」 |
「操作方法をご教授ください」 | 「操作方法をご教示ください」 | 具体的な方法なので「教示」 |
「研修内容をご教示ください」 | 「研修をご教授ください」 | 技能指導なので「教授」 |
「ご教授いただきたく存じます」 | 「ご教授ください」 | 過剰敬語を避ける |
場面別の使い分けガイド
社内での使い分け
ご教示:「会議の議題をご教示ください」「手続きの流れをご教示願います」
ご教授:「営業ノウハウをご教授ください」「マネジメント手法をご教授願います」
社外での使い分け
ご教示:「貴社の窓口をご教示ください」「納期をご教示いただけますか」
ご教授:「業界の動向についてご教授ください」「技術的なご指導をお願いします」
より自然な代替表現
文化庁の敬語指針では、「平易で分かりやすい表現」が推奨されています。状況に応じて以下の表現も活用しましょう。
場面 | 代替表現 | 使用例 |
---|---|---|
情報確認 | お聞かせください | 「詳細をお聞かせください」 |
説明依頼 | ご説明ください | 「手順をご説明いただけますか」 |
確認依頼 | ご確認ください | 「内容をご確認ください」 |
助言依頼 | ご指導ください | 「今後の進め方をご指導ください」 |
敬語レベルの調整方法
相手との関係性に応じて、敬語レベルを調整することも大切です。
丁寧度別の表現パターン
【基本レベル】 「○○についてご教示ください」 【丁寧レベル】 「○○についてご教示いただけますでしょうか」 【最上級レベル】 「○○について、お教えいただければ幸いです」 【カジュアル】 「○○について教えていただけますか」
メール作成時のチェックポイント
- 具体的な情報 → 「ご教示」を使用
- 専門的な指導 → 「ご教授」を使用
- 相手との関係性に適した敬語レベル
- 過剰敬語になっていないか
- 代替表現でより自然にできないか
よくある質問
「ご教示ください」と「ご教授ください」、どちらが丁寧ですか?
丁寧さに違いはありません。重要なのは使い分けです。情報や手順を聞く時は「ご教示」、専門的な指導をお願いする時は「ご教授」を使いましょう。
期間の長短で使い分けるという説は正しいですか?
公的な資料では期間による明確な区分はありません。内容の性質(情報提供か専門指導か)で判断するのが適切です。
「ご指導ください」との違いは何ですか?
「ご指導」は幅広い場面で使える表現です。迷った時は「ご指導」を使うか、より具体的な「お教えください」「ご説明ください」などを選ぶのも良いでしょう。
社内メールでも使うべきですか?
社内の関係性によります。かしこまった場面では適切な敬語を使い、普段のやり取りでは「教えてください」など、自然な表現で十分です。
間違って使ってしまった場合は?
大きな問題にはなりませんが、今後は正しく使い分けることが大切です。相手が違和感を感じる可能性があるため、適切な表現を心がけましょう。
まとめ
「ご教示」と「ご教授」の使い分けは、内容の性質で判断するのがポイントです。
- ご教示:手順・方法・情報など、具体的なことを教わる時
- ご教授:知識・技術・スキルなど、専門的な指導をお願いする時
- 迷った時は「ご指導」「お教えください」などの代替表現も活用
- 相手との関係性に応じて敬語レベルを調整
適切な敬語を使うことで、相手に好印象を与え、スムーズなコミュニケーションにつながります。この記事の例文を参考に、自信を持って敬語を使い分けてください。